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コラム

2026.08.06
AIは経理をどう変えるか?を検証!


 経理の作業量が減らず、生産性向上の限界を感じている。 属人化を解消し、誰でも運用できる“再現性のある経理体制”を整えたい。AIで何が自動化できるのか、実務視点で具体的に知りたい。

経理の作業量が減らず、生産性向上の限界を感じている。
属人化を解消し、誰でも運用できる“再現性のある経理体制”を整えたい。
AIで何が自動化できるのか、実務視点で具体的に知りたい。

多くの企業では、経理担当者が日々発生する入力・確認作業に追われ、本来注力すべき財務分析や経営支援まで手が回らないケースがあります。一方で、人手による入力や確認作業は担当者の負担となり、業務の属人化や生産性向上の限界につながるケースも少なくありません。

こうした課題を解決する手段として注目されているのが、AIを活用した経理業務の自動化です。AI OCRによる書類のデータ化や、過去の処理履歴を学習した仕訳提案、異常データの検出などにより、経理業務の進め方は大きく変わりつつあります。

本コラムでは、AIが経理業務のどの領域を変えるのか、実際の活用方法や今後求められる経理担当者の役割について解説します。

>関連記事はこちら『経理は自社でやるべき?アウトソーシングするメリット・デメリットを税理士が解説

AIが変える経理業務の3つの領域

AI技術の進化により、経理業務では請求書処理や仕訳入力などの定型作業を自動化できる範囲が広がっています。一方で、AIは単に作業時間を削減するだけでなく、蓄積されたデータを活用した分析や経営判断の支援にも活用され始めています。

本章では、AIによって変化する経理業務を「入力・仕訳」「チェック」「予測・分析」の3つの領域に分けて解説します。

入力・仕訳の自動化(RPA+AI OCR)

これまで経理担当者が手作業で行っていた請求書や領収書の入力作業は、AIやRPAの活用によって大きく効率化できます。

RPA(Robotic Process Automation)とは、あらかじめ設定したルールに基づいて、定型的なパソコン操作やデータ処理を自動実行する仕組みです。経理業務では、請求書情報の入力や会計システムへのデータ転記など、繰り返し発生する作業の自動化に活用されています。

AI OCR(Optical Character Recognition)は、紙の請求書や領収書などを読み取り、記載された情報をデータ化する技術です。近年ではAIによる認識精度の向上により、手書き文字や複雑な帳票にも対応できるようになり、入力作業の負担軽減につながっています。

RPAとAI OCRを組み合わせることで、書類の読み取りからデータ入力、会計システムへの登録まで、経理業務の一連の流れを効率化できます。これにより、担当者は単純な入力作業ではなく、確認や分析、判断が必要な業務に集中できるようになります。

具体的には、以下のような業務を自動化・支援できます。

・AI OCRによるレシート・請求書のデータ読み取り
・取引内容に応じた勘定科目や税区分の仕訳提案
・過去の処理履歴を学習した仕訳精度の向上

例えば、freeeやマネーフォワード クラウドなどのクラウド会計ソフトでは、AIを活用した仕訳提案機能が搭載されています。過去の仕訳データや取引パターンをもとに適切な勘定科目を推測し、担当者の入力作業を削減できます。

これにより、月次処理のスピード向上だけでなく、担当者ごとの判断のばらつきを抑え、経理業務の標準化にもつながります。さらに、入力作業にかかる時間を削減することで、経理担当者は財務分析や業務改善、経営への提案など、より付加価値の高い業務に時間を充てられるようになります。

>関連記事はこちら『freeeとMFクラウド会計、機能の違いは?

チェック業務の自動化(異常検知)

経理業務では、入力後の確認や照合作業にも多くの時間がかかります。特に大量の取引データを人が確認する場合、担当者の負担が大きく、見落としのリスクも発生します。

AIは過去の取引データや設定したルールをもとに、通常とは異なる処理や確認が必要な項目を抽出できます。

具体的には、以下のような業務を効率化できます。

・過去データと比較した不自然な取引の検出
・入出金データと帳簿データの自動照合
・経費ルールから外れた申請へのアラート通知

AIがすべての会計判断を行うわけではありませんが、確認が必要な項目を自動で絞り込むことで、経理担当者は重要な判断や例外処理に集中できます。

その結果、確認作業の効率化だけでなく、内部統制の強化や経理業務の品質向上にもつながります。

予測・分析の高度化(AI予測モデル)

  • AIの進化により、経理業務は過去の取引を記録・集計するだけでなく、蓄積されたデータをもとに将来の経営判断を支援する役割へ広がっています。

    AIを活用することで、以下のような分析や予測が可能になります。

  • ・将来のキャッシュフロー予測
    ・売上や粗利の変動要因分析
    ・予算と実績の差異分析
    ・資金繰りリスクの早期発見

  • 従来は担当者が多くの時間をかけて作成していた経営資料も、AIによってデータ整理や分析作業を効率化できるため、より短時間で作成できるようになります。

    ただし、AIが提示する分析結果をそのまま利用するのではなく、数値の背景や事業状況を踏まえて判断することが重要です。今後の経理担当者には、AIが生成した情報をもとに経営課題を発見し、改善策を提案するなど、より戦略的な役割が求められるようになります。

 

AI導入で経理担当者の仕事はどう変わるか

  • AIの導入により、経理担当者の役割は、単純な入力や集計作業を担う「処理担当」から、データを活用して経営を支援する「分析・提案担当」へと変化していきます。

    具体的には、以下のような変化が期待されます。

    ・作業時間が削減され、管理・統制・判断業務の比重が高まる:請求書入力や仕訳処理、照合作業などの定型業務をAIが支援することで、経理担当者は業務改善や内部統制の強化、重要な判断業務に時間を充てられるようになります。
    ・経営層とのコミュニケーション機会が増える:AIによって財務データの整理や分析が効率化されることで、経理担当者には数値をもとに経営課題を発見し、改善策を提案する役割が求められます。
    ・データを読み解く力が重要なスキルになる:今後の経理担当者には、AIが出力した分析結果を理解し、事業状況と照らし合わせて判断する能力が必要になります。

    つまり、これからの経理に求められるのは「AIに仕事を任せること」ではなく、「AIを活用してより価値の高い仕事を行うこと」です。AIを使いこなす経理担当者が、企業の意思決定を支える存在になっていきます。

  • >関連記事はこちら『今後、経理業務のDX化は当たり前になる!?デジタル活用のメリットを解説

 

AIでは代替できない“人間の経理”の価値

  • AIによって多くの経理作業が効率化される一方で、すべての業務をAIに任せられるわけではありません。取引の背景や企業ごとの事情を踏まえた判断、関係者との調整、最終的な責任を伴う意思決定は、引き続き人が担う重要な役割です。

    具体的には、以下のような業務はAIだけでは対応が難しい領域です。

    ・税務・会計処理における判断:複数の処理方法が考えられる取引や、税務上の判断が必要なケースでは、企業の状況や将来的な影響を踏まえた専門的な判断が求められます。
    ・社内調整やコミュニケーション:経理業務では、各部門との確認やルールの調整、経営層への説明など、人とのコミュニケーションが欠かせません。
    ・経営者の意図を踏まえた意思決定支援:同じ財務データであっても、企業の目的や経営方針によって見るべきポイントは異なります。経営者の考えを理解し、適切な提案につなげる役割は人にしかできません。
    ・組織の内部統制設計:業務フローの改善や承認ルールの整備など、企業に適した管理体制を設計することも経理担当者の重要な役割です。

    AIは定型的な作業を効率化する一方で、最終的な判断や責任を担うのは人間です。今後の経理担当者には、AIを活用しながら、より高度な判断や経営支援を行う能力が求められます。

 

AI導入の現実的な課題と注意点

  • AIを導入することで、経理業務を自動化できる範囲は広がります。しかし、AIを効果的に活用するには、事前のデータ整備や業務ルールの整理、適切な運用体制の構築が欠かせません。

    AI導入時には、以下のような課題に注意する必要があります。

    データ整備の必要性

    AIは蓄積されたデータをもとに処理や分析を行うため、取引先情報や勘定科目、仕訳履歴などのデータに不備があると、期待した精度を発揮できません。導入前に、既存データの整理や更新を行うことが重要です。

    社内ルールの標準化

    担当者ごとに処理方法や判断基準が異なる状態では、AIによる自動化の効果が限定的になります。仕訳ルールや承認フローなど、経理業務の基準を明確化することで、AIを活用しやすい環境を整えられます。

    AI仕訳の確認体制

    AIによる仕訳提案は入力作業の効率化に役立ちますが、すべての処理を正確に判断できるわけではありません。特殊な取引や判断が必要な処理については、担当者による確認や修正が必要です。

    セキュリティ・情報漏洩対策

    経理データには、売上情報や取引先情報など重要な情報が含まれています。AIツールを導入する際は、データの取り扱いやアクセス権限、提供元のセキュリティ対策などを確認することが重要です。

    コストとROIの見極め

    AIツールの導入には、システム利用料だけでなく、業務整理や社員教育にかかるコストも発生します。削減できる作業時間や業務品質の向上効果を確認し、自社にとって十分な投資効果が得られるか判断する必要があります。

    AI導入は、一度にすべての業務を置き換えるのではなく、まずは請求書処理や仕訳入力など効果を測定しやすい領域から始め、成果を確認しながら段階的に活用範囲を広げることが成功のポイントです。

税理士が見る“AI時代の経理部門”の未来像

AIの普及により、経理部門の役割は大きく変化していくと考えられます。これまで多くの時間を費やしていた日々の仕訳入力や確認作業は、AIによる支援によって効率化され、経理担当者はより高度な判断や経営支援に注力できるようになります。

税理士の視点から見ても、今後の経理部門は「正確に数字を処理する部門」から「財務情報を活用して経営を支援する部門」へと変化していくことが期待されます。

具体的には、以下のような変化が考えられます。

月次処理の早期化・リアルタイム化

AIによるデータ入力や会計システムとの自動連携が進むことで、従来よりも迅速に財務状況を把握できるようになります。月次決算の早期化により、経営者はよりタイムリーな情報をもとに意思決定できるようになります。

経理が“経営の意思決定支援部門”へ変化

経理担当者は、単に過去の数字を集計するだけではなく、財務データを分析し、経営改善につながる提案を行う役割が求められます。利益率の改善やコスト削減、資金繰り管理など、経営に近い領域での貢献が期待されます。

AIが作成したレポートを人間が解釈し、経営へ提案

AIは大量のデータ分析やレポート作成を支援します。しかし、分析結果の背景を理解し、自社の状況に合わせて具体的な施策へつなげる判断は、人が担う重要な役割です。

税務・会計はより高度な判断業務へシフト

定型的な処理がAIによって効率化される一方で、複雑な税務判断や経営への助言など、専門性が求められる業務の重要性はさらに高まります。

AIによって経理業務は単なる効率化にとどまらず、企業の意思決定を支える、より価値の高い業務へ進化していくでしょう。

 
  • まとめ:AIは経理を「効率化」から「高度化」へ導く

    AIは単なる作業を自動化するためのツールではありません。入力や確認などの定型業務を効率化することで、経理担当者がより高度な分析や判断、経営支援に注力できる環境をつくります。

    これからの経理部門には、AIを活用して財務データを読み解き、経営判断につながる提案を行う役割が求められます。AIを使いこなせる経理体制を構築することは、業務効率化だけでなく、企業の意思決定スピードや競争力の向上にもつながります。

    今後の変化に対応するためにも、経理部門はAI活用に向けたデータ整備や業務整理など、できる準備から段階的に進めていくことが重要です。

  • よくある質問

  • AIによる経理業務の変化について、よくある質問をまとめました。

    Q. AIを導入すると経理担当者の仕事はなくなりますか?

    いいえ、AIによって経理担当者の仕事がすべてなくなるわけではありません。AIは仕訳入力や請求書処理、データ照合などの定型業務を効率化する一方で、税務判断や経営への提案、社内調整など、人による判断が必要な業務は引き続き重要です。今後は、単純な処理作業を担う役割から、財務データを活用して経営を支援する役割へ変化していくと考えられます。

    Q. AIで効率化できる経理業務にはどのようなものがありますか?

     AIでは、請求書や領収書のデータ化、仕訳候補の提案、入出金データと帳簿データの照合、不自然な取引の検出、財務データの分析などを効率化できます。ただし、すべての処理を完全に自動化できるわけではなく、最終的な確認や判断は経理担当者が行う必要があります。

    Q. 小規模な企業でもAIによる経理効率化は可能ですか?

    可能です。近年では、クラウド会計ソフトなどにAIを活用した入力支援や仕訳提案機能が搭載されており、大規模なシステム開発を行わなくても導入できるサービスが増えています。まずは請求書処理や仕訳入力など、効果を確認しやすい業務から段階的に取り組むことが重要です。

    Q. AIによる仕訳は正確ですか?

    AI仕訳の精度は向上していますが、すべての処理を正確に判断できるわけではありません。AIは過去の仕訳データや取引パターンをもとに仕訳候補を提示するため、特殊な取引や判断が必要な処理については、担当者や税理士による確認が必要です。

    Q. AI導入前に準備しておくべきことはありますか?

    AIを効果的に活用するには、経理データの整理や業務ルールの標準化が重要です。取引先情報、勘定科目、仕訳ルールなどが整理されていない場合、AIの精度や自動化効果が十分に発揮されない可能性があります。導入前に現在の経理業務を整理し、AIを活用しやすい環境を整えることが重要です。

  • Q. ChatGPTなどの生成AIは経理業務に使えますか?

    「AI 経理」と検索するユーザーの中には、会計ソフトの自動化機能だけでなく、ChatGPTなどの生成AIを使って経理業務を効率化できるか知りたい層も多く含まれます。

    特に、以下のような用途への関心があります。

    • ・経理資料や報告書の作成補助
    • ・財務データの分析・要約
    • ・Excel関数や集計作業のサポート
    • ・社内向け文書やメール作成の効率化

    ただし、生成AIは会計処理を完全に代替するものではないため、機密情報の取り扱いや出力内容の確認が必要という注意点も解説できます。

    Q. 経理AI化にはどれくらい費用がかかりますか?

    AI導入を検討している企業は、「何ができるか」だけでなく「自社でも導入できる費用感なのか」を確認したい傾向があります。

    費用に関する疑問をFAQで解消することで、導入検討段階のユーザーを取り込めます。

    また、経理AI化の費用は、

    • ・クラウド会計ソフトの利用料
    • ・AI OCR・請求書処理ツールの利用料
    • ・RPA導入費用
    • ・初期設定や業務整理の費用
    • ・社員教育コスト

    など、導入範囲によって大きく異なるため、「小規模な導入から始められる」という記事内の主張にもつなげられます。

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この記事を担当した税理士
サイバークルー会計事務所 代表 横山 禎一(よこやま ていいち)
保有資格1961年、愛知県に生まれる。1985年同志社大学卒業後、大手化学メーカーに勤務。 退社後、1993年に米国のジョージ・ワシントン大学にてMBAを取得。帰国後、外資系企業の経営企画室や財務・経理部に勤務しながら、筑波大学大学院で修士法学取得。2000年に日米合弁のITベンチャーの立上げに加わり、10数億円の資金を集めIPOを目指したが、2003年に倒産。 この経験から、会社の倒産を防ぐ税理士・行政書士事務所を設立。起業希望者や起業家をサポートする「日本起業家倶楽部」を立上げ、創業スクールやセミナー・交流会などを主催している。
専門分野税理士、行政書士、MBA
経歴経理体制構築、経営計画サポート
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