【士業】経理業務の増加に伴い、経理の効率化を継続アドバイ…
☑経理業務の効率化を図りたい。
☑電子帳簿保存法改正を機に経理業務のDX化を図りたい。
☑バックオフィスDX化により効率を改善したいが何から手をつけて良いか分からない。
最近、経営者の方、経理ご担当者の方から「電子帳簿保存法の改正が2022年1月に施行されると聞いてますが、何か対応が必要ですか?」と言ったご相談を受けることが多くあります。電子帳簿保存法は、実は20年以上も前の、1998年に施行された法律です。最初に施行されてから、6回ほど改正*されており、長く経理業務に携わっている方からは「また改正されるそうですが、何が変わるのですかね・・・。」とあまり期待をされていないお声もお伺いいたします。
>*関連コラム:電子帳簿保存法改正の変遷をご紹介「DX推進に繋がる電子帳簿保存法の改正とは?専門家がわかりやすく解説!」
そのようなお話をお伺いした際に、弊社からお伝えしているのは、
「今回の電子帳簿保存法改正は、貴社の業務フローを見直し、経理業務の効率化を図るチャンスです。」ということです。
なぜ、2022年施行の電子帳簿保存法改正は、今までと違うのか以下にご説明したいと思います。
目次
実は、電子帳簿保存法は今から20年以上前の1998年に最初に施行されました。電子帳簿保存法は各税法で原則紙での保存が義務づけられている帳簿書類について一定の要件を満たせば、電子データによる保存を認めることを定めた法律で、事務処理負担の軽減を目指して打ち出されました。1990年代は、日本において急速にインターネットが普及し始めた頃です。そのような時代の流れの中で、日本政府は、いち早く経理業務のデジタル化に向けた政策を打ち出していたと言えます。
(とは言っても、“DX”は2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された「進化し続けるITの浸透が人々の生活を豊かにしていく」という概念であり、施行当時の1980年代にはまだDXという言葉は存在していませんでした。)
このように長期に渡って経理業務のDX化への取り組みが成されているにも関わらず、電子帳簿保存を行っている日本企業は全体の7%しかないというデータがあります。(令和元年(2020年)の国税庁による税務統計)
今までの電子帳簿保存法が、大半の企業のDX化を踏みとどまらせていた理由は何だったのでしょうか?大きな障害となっていたのが、電子化にかかる申請の手間と時間、そして導入コストです。例えば、電磁的記録の備付けおよび保存に関する事務手続きを明らかにした書類及び、国税関係帳簿書類に係る電子計算機処理に関する事務手続の概要を明らかにした書類を作成し提出することが必要でした。しかも、運用開始の3ヶ月前までに所轄の税務署で手続きを行う必要があり、申請書の提出から、承認が得られるまで待機しなければならず、場合によっては修正などが求められるという可能性がありました。
更に、本来はDX化をすることで、コストが軽減されるはずが、電子帳簿保存を導入する際の適正事務処理要件を満たすには、事務処理担当者による相互チェックがあり、よって2名以上のマンパワーがかかってしまうという問題がありました。また、日付や金額に係る記録項目に関しては、2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することも要件に含まれていたため、詳細な検索機能をもったシステムの導入が必要でした。
本来、電子化によって、紙での保存が必要でなくなるため、コストが軽減されるはずが、このように人件費やシステム導入コストの方が勝ってしまうという本末転倒な状況があったと言えます。
では、なぜ今回の電子帳簿保存改正はDX化のチャンスなのかというと、上記に述べたような導入の障壁が大幅に軽減されるからです。
具体的には、どのような改正がなされるのか、3つの区分ごとにお伝えしたいと思います。
(国税庁HPより)
区分 | 改正内容 |
---|---|
①電子帳簿等保存 | ・電子的に作成した国税関係帳簿を電磁的記録により保存する場合には、事前に税務署長の承認が不要になる。 |
②スキャナ保存 |
・スキャナ読み取りの際、受領者の署名が不要になる。 ・タイムスタンプ*の付与期間最長2ヶ月以内と大幅に延長される。 ・社内規程整備を行う適正事務処理要件(定期検査、相互けん制)の廃止。 ・定期検査まで保存が必要だった原本は、スキャナ後にすぐに破棄が可能になる。 ・相互けん制の廃止。それにより、事務処理担当者は、2名ではなく、1名での対応で可となる。 ・検索要件の記録項目について、「年月日」「金額」「取引先」の3つだけに簡略化される。 ・税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保が不要になる。 ・売上1,000万円以下の事業者は検索要件は不要になる。 |
③電子取引 |
・タイムスタンプ*の付与期間最長2ヶ月以内と大幅に延長される。 ・検索要件の記録項目について、「年月日」「金額」「取引先」の3つだけに簡略化される。 ・税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保が不要になる。 ・売上1,000万円以下の事業者は検索要件は不要になる。 |
*タイムスタンプ:タイムスタンプは、時刻認証局(TSA:Time-Stamping Authority)が発行をおこなっており、電子データと時刻を組み合わせて構成されている。信頼されている第3者機関がタイムスタンプを付与することにより、付与時点で確かにデータが存在したこと、付与後にデータが改ざんされていないことの2つを証明できる。
このように、2022年1月の電子帳簿保存法改正で、経理業務におけるDX化の導入コストと手続きの手間が改善されるだけでなく、運用における効率化を図る様々な改正がなされます。コロナ禍という状況だけでなく、気候変動における自然災害が今後も予測される中、政府としても、持続可能な経済活動のためには、様々な働き方を可能にし、データの管理という意味でも、紙での管理を中心とした経理業務において、DX化を急速に進めなければならないと感じての、今回の抜本的な改正だと言えます。電子帳簿保存法改正で、DX化の波が来ている今、バックオフィスのDX化により効率化を図る、正に今がチャンスであると言えます。
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